【外岩レポート第12段】瑞牆山の百獣の王

タクマ
タクマ

こんにちは、タクマです


去る10月16日。

瑞牆山は不動沢エリアを訪れました。

紅葉が色づきはじめる直前のこの時期、迫る寒波のためかクライミングのメッカである瑞牆山にもリードクライマーの影はまばらでした。

ぼくは基本的にリードばかりやっているクライマーなので、この時期になってもボルダーに移ることなくリードクライミングを続けています。

ふつうは寒すぎてさっさとリードから撤退するのですが、ぼくの場合は気温5℃くらいになっても挑戦をやめません。

そんなリードクライミングの熱狂的愛好家であるぼくですが、このたびまたひとつ個人的な快挙を達成しました。

今回は「百獣の王(5.11c)」に挑戦。

そしてM・O・Sマスターオンサイト に成功しました!

ルートのまえで勝利の記念撮影!

「百獣の王」は瑞牆山の有名ルート

グレードこそさほど高くありませんが、トポにおいては世界的に有名なクライマーである平山ユージさんが登っている写真とともに紹介されていて、同グレードのほかの課題とは一線を画した特別感を放っています。

今回はこの課題の完登を目指すクライマーに同行するかたちで現地に到着。

ヌンチャク(クイックドロー)をかけるなどの登攀の下準備を、アシスタントとして同行したぼくが担当しました。

つまり、ぼくは M・O・S のチャンスを与えてもらえたわけです。


M・O・SマスターオンサイトO・Sオンサイトより高度な完登。

初見の課題を一撃で制覇することが通常のOS。

課題を一回のトライで攻略することは十分に高度なことですが、一般的にそうしたトライはボルトにヌンチャクを掛けておくなどの下準備をしたうえで行なわれます。

しかしながら!

マスタースタイルによるリードクライミングではこの下準備から自分自身で行ないます。

クライマーはロープをクリップしていくだけではなく、そもそもクリップするための土台であるところのヌンチャクを引っ掛けるところから行なうのです。

金属製のヌンチャクを大量に引っ提げて登るのですから、文字通りハンデを背負った状態でのトライになります。

この条件でOSを成功させること。

それがM・O・Sマスターオンサイトです!

下から見上げる「百獣の王」。
高さ20メートルと比較的高く、終了点が見えません。

当日寒さとの戦いでもありました。

純粋な気温の低さにくわえて、太陽があたっていなかったため、岩壁がかなり冷たい状態になっていました。

冷え切った岩肌に体温を奪われ手の感覚が麻痺していく危険があるため、登りながら指に息を吹きかけ、首元に手をあてたり、チョークバッグにカイロを入れたりといった対策を万全に。

指先を温めつつ、5m、10m、15mと、徐々に高度を上げていきます。

核心部を前にしてパートナーを一瞥。
ここまで来て落ちたくはないと気合を入れ直しました。

ここからが百獣の王の核心部。

この課題は高さは20メートルですが、終盤にトラバースが控えており、全長は25メートルと長めです。

そして、そのトラバースパートこそが最大の核心でした。

実力的には持てるホールドばかりでしたが、とにかく終盤に待ち構えていることもあって蓄積した疲労に苦しめられます。

「終盤が核心部」というのはただでさえ精神的なストレスが大きいのに、それにくわえて今回は低気温にマスタースタイルという悪条件。

まさに自らのメンタルとの勝負でしたが、自分の集中力が保ってくれることを信じて、どうにか完登を果たしました!

テンションをかけてもらって足元を見下ろす。
これらのヌンチャクはすべて自分で設置してきたのです。

というわけで、今回は「百獣の王」のマスタースタイルでのオンサイトに成功し、ぼくとしては大満足の収穫となりました。

一方で、同行していたパートナーのほうは、残念ながら核心部でのフォールという結果となり完登はなりませんでした。

それでもこの悪条件のなか終盤の核心部まで辿り着いたことは素晴らしいと思います。

次回もいっしょに瑞牆を訪れ、ぜひリベンジを果たしてほしいと思います。

改めまして、このたびはごいっしょしていただきありがとうございました!




というわけで、今回のレポートは以上になります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

それではみなさん。

ガンバです!


提供:ボルダリングジムBolBol