目的別に理解するボルダリングの基本ムーブ10選【前編】

こんにちは! BolBolです!


本記事では二部構成で、ボルダリングの上達には欠かせない基本ムーブ(身のこなし)をお伝えしていきます


「どんな動きなのか」を説明するだけではなく、主にどういうときに使うのかと目的別に整理し、そのムーブが有効である理由までご説明します!

したがって、この記事をお読みいただければ、ムーブが使えるようになるだけではなく、課題の各箇所で適切なムーブを選択するオブザベ能力まで養っていただけるはずです!



なお、後編は以下のリンクからご覧いただけますので、より興味のある方から先に読んでいただいても構いません。

効率よく登るための基本

最初にご紹介する2つのムーブは、基本を通り越して、もはや「壁を登る」という行為そのものです。

基本的に、「ホールドを取りにいく」という行為はこれら2つのムーブのどちらかによって行なわれ、それができないときには例外的にほかのムーブを使用する、と考えていただいてかまいません。

洋食でいえばフォークとスプーン、理科の実験でいえばガスバーナーとこまごめピペットくらいの必須ツールとなっておりますので、きっちりと学んでいきましょう!

正対(せいたい)

壁と胴体を平行にして登るムーブです。

壁に対して真正面から向き合う威風堂々としたスタイルとなります。

王道ムーブ”正対”

初心者の方でも自然に使っていることが多いムーブで、いわばクライミングにおける”歩行”です。

しかしながら、モデルさんの”ウォーキング”と一般人の”歩行”が大きく異なるように、正しい”正対”を行なうためにはいくつか重要なポイントがあります。


最大のポイントは、支点が対角線上に位置するように手足を使うということです。

右手と左足による支点は胴体の対角線上に位置します

一方、次の画像をご覧ください。

左手と左足で支持しており、支点が身体の片側(左半身)に偏っています

この画像では右足は固定されていません

このような支持の仕方では、左半身が回転軸となり、右手を離した瞬間に身体がドアのように回転を始めてしまいます(右手・右足で支持してしまった場合も同様です)。

左半身が回転軸となり壁から剥がされます

そこで、改めて冒頭の画像を確認してみます。

このケースでは、支点が左手・右足となっており、対角線上で支持しています。

理屈を踏まえてもう一度同じ画像を観察してください。


こうすれば、回転軸が身体の中心を通るので、回転しづらくなって安定した登りが実現するのです。


クライミングの基本は”対角線支持”

まずはこれを徹底してください!



もっと学ぶ!

スピードで解決する!


”対角線支持”は基本中の基本ですが、基本があれば例外もあります。

さまざまな理由により、あえて”同側支持”をするシーンも出てくるのです。

このようなときには、手を離した瞬間に回転が始まってしまいますから、なにかしら対策を講じなければなりません。


そこで。

もっとも単純な対策は、回転によって壁から剥がされるまえに次のホールドを素早く取ってしまうことです。

右手・右足の同側支持なので回転が始まりますが……
素早く立ち上がり……
ホールドを掴み……
壁から剥がされるまえに対角線支持(安定姿勢)を実現!

このようなダイナミックな動作によって、同側支持のリスクを最小限にすることができます。

ちなみに、別の対策方法としては、後ほどご紹介する”フラッギング”というムーブがあります
このムーブを使えば、そもそも回転自体を防ぐことができます。

ダイアゴナル

もう1つの定番ムーブが”ダイアゴナル”です。


”正対”との比較で理解していきましょう。


まずは共通点の確認です


正対同様に対角線支持になっています。

左手保持・右足支点になっています。
正対(再掲)。右手・左足支持

しかし、明確な違いが見て取れます

”正対”とは異なり、膝を内側に入れて腰をひねることで取りにいっています。

さらに、この動作をしやすくするために軸足の位置が取りに行くホールドとは反対寄りになっています。

このように、ダイアゴナルでは腕の力で引きつけるというよりは腰の回転動作によって取りに行くので、筋力が育っていない初心者クライマーでも使いやすいムーブとなっております。


したがって、とくに強傾斜に挑む場合、初心者はパワーのいらない”ダイアゴナル”をベースに挑戦することをオススメします!



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”正対”の必要性は?


ここまでの説明を踏まえて。

”ダイアゴナル”が簡単なら、わざわざ”正対”を使う必要はないのでは?


と思われた読者もいらっしゃるかもしれません。


ですが、”ダイアゴナル”の使用が難しいシーンが存在します。


その理由は、腰の回転動作を実現するために、ホールドを手前に引っ張るように保持する必要があるからです。

ダイアゴナル
回転動作で右半身を近づけるなら左半身は遠ざかります。

このような「手前に引っ張る」という力のかけ方は、ガバやピンチ、エッジの効いたカチなどの場合には可能になりますが、より持ち感の悪いホールドの場合は難しくなります。

すなわち、手前に引っ張ることが難しいホールドだと”ダイアゴナル”の使用は困難になってしまいます。



ということで。

万能なムーブはありません。


ゆえにさまざまなムーブが存在するので、それらを適材適所・臨機応変に使い分けていく意識が大切です!

同側連続なホールド対策

課題において難所になりやすいのが、左右どちらか同じ側にホールドが連続している場合です。

左・右・左……というように、左右交互にホールドが配置されていれば、先ほどご説明した”正対”や”ダイアゴナル”を駆使してはしご感覚で登っていくことができます。

しかし、”右”の次がまた”右”だったり、”左”の次にまた”左”だったりする場合は、手を出す順序に迷わされるために難しくなるのです。


こんなときの基本的な選択肢は3つ


”マッチ” ・ ”クロス” ・ ”送り”です。


この3つをきちんとおぼえておけば、ほとんどの場合は迷うことなく処理できますので、きちんと押さえてきましょう!

マッチ(両手持ち)

おそらくはもっとも単純な解決策がこれです。

いったん両手でホールドを持つことで、ふたたび同じ手を出せるようにします

次の写真をご覧ください。

右足支点なので、右手出し(左手残し)が自然です

右手で初手(1)を取ったあとで、またしても右側のホールド(2)を取りにいかなくてはならない場面です。


そこで、次のように解決します。

右手で持ち、足を入れ替え体勢を整えます。
左手を寄せてきて両手で保持し……
ふたたび右手出し。

このように、ホールドをいったん両手で持つことによって、「右手の次は左手」という一般的な手順を入れ替えて、「右手の次にふたたび右手」という手順にすることが可能になります。



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もう1つの”マッチ”効果


両手持ち(マッチ)のメリットは、「手順の入れ替え」だけではありません。

単純な話ですが、両腕で引っ張れるようになるので身体を引き上げるパワーが2倍になります!


「手を入れ替えたいな」というときのマッチ

「もっとパワーがほしいな」というときのマッチ


マッチ(両手持ち)の2大効果として、きっちり押さえておきましょう!


※補足※
厳密には、マッチをせず、左右それぞれに違うホールドを保持した状態でも、両腕で引くことはできます。しかしながら、より高い位置にあるホールドにマッチをすることで、両腕で引くパワーをより高い位置で発揮できるようになるので、身体を引き上げやすくなるのです。

クロス

”マッチ”は便利かつ簡単な方法ですが、決して万能ではありません。


次の画像を見てみましょう。

”マッチ”で処理することを想像してください

1手目のホールドに注目してください

ホールドが小さいと感じていただけたでしょうか?


そうなのです。

マッチ”はたいへん便利なムーブですが、両手で持てないホールドには無力なのです。
(注:両手で持てるかどうかはその人の実力次第です)


そこで。

べつの選択肢として ”クロス” があります

まずは順当に左手を伸ばし……
その左手を追い越すように右手を出します。

このように、左・左 と同じ側にホールドが配置されているにもかかわらず、腕を文字どおりクロスさせることで、左手・右手というように左右交互の手順を貫くのです。

ホールドの配置に屈することなく”左右交互”に手を出すようにする。

それが ”クロス” ムーブです。



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”クロス”のコツは重心移動!


基本的に、クロスムーブを使うと、身体を残して手がどんどん先に進んでいきます。

それによって、重心の位置と保持している手の位置が大きくずれることになります。

右手・左足の対角線支持ですが重心が右寄りすぎて不安定です!

このままですと、左手を離したときに身体が大きく振られ、落ちてしまうリスクが高まります。

そこで、”クロス”をしたときには、出した手の真下に重心を移動させることがポイントです。

重心を移動させて安定を図ります。

送り

マッチ”が難しい場合のもう1つの選択肢が”送り”です

さっきと同じケースを、今度は”送り”で処理してみましょう。

クロス使用時と同様にまずは左で取りますが……
そこから勢いをつけて
さらにその先へと左手を出します。

このようなムーブを”送り”と呼びます。
文字どおり、同じ方向に向かって手を送っていくのです



”クロス”か”送り”かは状況次第です。

今回は両方とも使えるシーンでしたが、自分の手が届く距離(リーチ)を考慮した結果、”クロス”一択になるかもしれませんし、またべつの状況では”送り”しかできないかもしれません。

そのあたりは経験値を積んで判断力を磨いていく必要がありますが、いずれにせよ、基本的な選択肢としてしっかりと把握しておきましょう。

まとめ

お疲れさまでした!

いろいろとご説明したのでなかなかヘビーな内容となり、読み通すのに大変な思いをさせてしまったかもしれません。そのぶんだけ充実した情報だと感じていただけていればうれしいのですが、いかがだったでしょうか。

今回の内容を一度にすべて把握する必要はありません。

よろしければブックマークをして、必要なときにぜひ読み返してみてください。

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最後に1つ注意があります。

今回は初心者にとってのわかりやすさを重視して、ムーブを目的別に整理してみましたが、実際のムーブ選択は自分の長所や短所、ホールド全体の位置関係や壁の傾斜など、さまざまな要素を複合的に考慮した結果として定まるものです。

なので、必ずしもここに書いてある目的でそのムーブが使用されるとは限らないことを、心に留めておいてください。

選択肢は人それぞれです。

「こういうときにはこれが正解!」と機械的に決定するのはなかなか難しいのです。理論を突き詰めていけばそんなアルゴリズムも完成するのかもしれませんが、それは一筋縄ではいかない難行でしょう。

それよりも、こうした選択は基本的な理屈を押さえたうえで、経験の蓄積によって養われるある種のセンスを活用するのが一般的な方法であり、自然な態度でしょう。

なので、今回の記事を参考に練習を重ねていったうえで、自分なりのセンスやロジックを築き上げていっていただけるとうれしいです!



というわけで、前編は以上になります。

後編では、主に足技を取り上げ、とくに回転を制する原理とムーブについてご説明していますので、ぜひ合わせてご覧ください。



また、ムーブ以前のクライミングの基本的な考え方については、以下の記事でご紹介していますので、合わせて参考になさってください!



最後までお読みいただき、ありがとうございました。

それでは、ガンバです!


提供:ボルダリングジムBolBol