外岩クライミングレポート番外編【小川山サマータイム特集】

タクマ
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こんにちは。タクマです。

回の記事では小川山は兄岩のリード課題「サマータイム」を攻略したことをご報告しました。

そこで今回は、その記事のなかで予告しておいたとおり、サマータイムの全容についてのレポートをお届けしたいと思います!

地獄のようにキツかった核心部の様子などについてお伝えします!

今回の記事は、サマータイムへの挑戦に意欲がある方はもちろんのこと、外岩クライミングに関心のあるすべての方に幅広く楽しんでいただけるように書いたつもりですので、みなさんぜひ最後まで楽しんでいってください。

タクマ
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実際に登っている様子を動きつきで見ていただきたいので、今回は動画多めです! 通信環境の良い場所で読むことをオススメします。

前回の記事はこちらからどうぞ!

サマータイムの概要

高難度課題として知る人ぞ知るサマータイム。

具体的な攻略情報に入るまえに、まずはこれがどのような課題なのかご説明しましょう。

タクマ
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「そんなの良いから早く登っているところを見せて!」という方は目次から記事の後半まで飛んでください。

サマータイムのステータス

サマータイムは小川山は兄岩にそびえる15mの垂壁課題

グレードは5.13b/c

1988年に堀地清次ほっちせいじさんが初登して以来、公式の再登情報によれば2015年時点まででわずか10名のクライマーしか登れていないハイレベルなリード課題です。

もちろん非公式にはもっと登れているでしょうが、それでもごく限られた人しか登れないレベルであることはそのグレードの数値からも明らかです。

タクマ
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まあ、ぼくは登れたんですけどね!(ドヤ)

サマータイム(遠景)。 指差す先がその絶壁です。

本課題はまた、登る文筆家として有名な故・杉野保すぎのたもつ氏の連載企画「OLD BUT GOLD」において取り上げられたことでも知られています。

この企画はその名のとおり、古くて流行からは外れたものの、忘れ去られるには惜しい一級品のルートをピックアップしたもので、同じく小川山の”Ninja(5.14a)”や、静岡県は城ヶ崎の”MARS(5.13d)”など、全16ルートを解説しています(グレードは掲載時のものを参照しています)。

サマータイムは、この錚々そうそうたるラインナップの1つに数えられる栄誉ある課題なのです。

サマータイムの内容

サマータイムは比較的短いルートです。

前述のとおり、サマータイムは15mの垂壁課題ですが、この「15m」という数字はそのままルートの道のりも示しています。

つまり、きわめて直線的に登ることができる課題で、トラバースの必要性はほとんどありません(というより、たぶんできません)。

そのため、ルートの長さは壁の高さときっちり同じと考えてさしつかえないのです。


しかも、この写真のように5m地点にある最初のクリップまではいたって簡単です。

あえてグレードをつけるとしたら、せいぜい5.8程度でしょう。

つまり、サマータイムは実質的には10m程度の課題であるといえます。

リード課題にしては非常に短く、実質的な全長はひょっとしたら最短かもしれません。



ですが……


基本的には絶望的な絶壁です。

ホールドの厚さはせいぜい10mm弱がいいところで、目が肥えていなければホールドが見つからず、オブザベすら不可能だと思います。

もっとも、十分に実力のあるクライマーだとしても、無数に存在する極小の突起から、厚さの違いをミリ単位で見極め、向きや形状を吟味したうえで、ホールドとして使用する箇所を選別しますので、オブザベにはかなりの困難を伴うでしょう。

これがサマータイムにおけるガバ」です。
これを外引き(ガストン)で使ったりもします。
フットホールドはこれくらいのものがふつう。
なにを踏んでいるかわかるでしょうか?
これを踏んでいたのでした。

ところで、サマータイムは最初のクリップがプリクリップです。

前述のとおり、それは高さ5m地点にあるのですが、そこまで確保ビレイなしでは危険であるため、あらかじめクリップを掛けておくことが推奨されています。

小川山は開拓された時期が古く、予算が現在いまよりは乏しかったために、打ち込むボルトの数が最小限に抑えられたのだそうです。

タクマ
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ちなみに、ぼくはプレクリップはせずに登りました。初登者と同条件で登りたいというクライマーとしてのプライドがあったからです。

実践した攻略ムーブ

際にぼくが実践したサマータイムの攻略ムーブを、これからご紹介していきます。

言うまでもないことですが、これはあくまでぼくの個人的な分析と戦略ですから、自分も挑戦してみようとされる方は、これを参考にして自分に合ったムーブを検討してください。

また、まだサマータイムレベルには届かない方でも、課題を攻略するときの考え方などについて感じ取っていただけるとうれしいです。

タクマ
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もちろん、まったくの事前情報なしで登りたいと思っている方にとっては、ここから先の情報は閲覧禁止です!

完登の一部始終を公開します!

さて、これからサマータイムの登り方についてお話したいのですが、口で説明するのも限界があります。

なので、ぼくがサマータイムを完登したときの動画を載せておきます!

これを踏まえて解説を行なっていきます。

3つの核心部

すでにお伝えしたとおり、最初の5mはまったく問題ありません。動画を見ていただければ、その難易度の低さがよくわかると思います。

それに、最後の3mも簡単です。ここに到達できるクライマーであれば、油断と疲労にさえ注意を払っていれば落ちることはないでしょう。

サマータイムの難しさは、中盤の5mから12mに集約されています。

微細なホールドの連続であり、極めて高いムーブの精度を要求されるため、呼吸すらままなりません。

この地獄の7mの区間に、ぼくは3つの核心部を見出しました。

以下では、それぞれの難所についてご説明していきます。

タクマ
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ここからも動画で説明します。通信環境が悪いと表示が遅れてしまいますがご了承ください。


第1核心部(動画の 0:42〜)

最初のクリップ直後のパートです。

右手で薄カチを外引きして、左足ハイステップから左手を寄せてクリップします。


クリップするとき左手で保持しているのは比較的良いホールド(10mm程度)ですが、最初のガストンで使用しているカチはかなり薄めです。

ですが、これを保持できないようではサマータイムの攻略は絶望的です。

これくらいのをガスで保持しています。

クリップ後は右手アンダーで取れるホールドがあるので、これをいったん保持。

そして、デッド気味に右手を薄カチへと送ります。


がめちゃくちゃ繊細です。

このようなムーブをするとき、いつもなら声を上げて耐えるのがぼくのスタイルなのですが、呼吸しただけでも手元が狂いそうになるために今回は静かにこらえました。

このあとは左足をクロスして右足を追い越し、じわじわと高度を上げて第2核心に突入します。



第2核心部(動画の 1:18〜)

個人的にサマータイムで最も難しいと感じたパートです。

まず、外引きしている左手を薄カチに送って順手に切り替えるのですが、このときのバランスが相当にシビアです。

わずかなブレも許されないため、体幹を酷使します。

左手を離した瞬間に猛烈な負荷に襲われます。
体幹の力で左手をコントロールしないと薄カチが正確に取れません。

そして、最大の難関は3つ目のヌンチャクへのクリップです。

左手をガスに切り替え、右手もガス。

つまりはいわゆる”観音”で保持した状態から、右足を上げます。


ご覧のとおり、「右足を上げる」という1ムーブにじつに10秒以上の時間を費やしました。

それだけバランシーだということです。

指の力を極限まで使って薄カチ観音で耐えながら、猛烈なバランスの悪さを体幹で支えなければいけません。

上げることに成功した瞬間に初めて声を出しましたが、これは息継ぎ。

ここまでほぼ無呼吸です。

そして、クリップします。


クリップするときには右足を思い切り押すことで左手ガスを利かせています。

フットホールド自体はそれほど悪くはありませんが、かなり強く押さなければ左手が利いてくれません。

この時点で痛覚が麻痺するほどに指を酷使していますし、腹筋が痙攣しそうな状態ですので、足を滑らせる危険性が高く、相当の注意が必要です。

足場はこれくらい。サマータイムのなかではかなり良いほうです。

このクリップに成功したら、いよいよ最後のパートに移行します。



最終核心部(動画の 2:14〜)

クリップ後に右手を出して、キョン足から左手、キョンを解除して右手を出します。

そして、そこからが最大の難関です。

ムーブとしては右足を上げるだけなのですが、手の悪さのためにすさまじい難易度となっています。


壁をトントンと連続的に蹴るように立ち上がっていることがおわかりになるかと思いますが、結果的にこうなっているのではなく、狙ってやっています。

これくらい壁に沿って上げていかないと剥がれてしまうからです。

力任せに保持すれば良いわけではなく、極悪なカチを保持できるのは当然のこととして、そこから絶妙なバランスを保って足を上げていかなくてはならないあたり、さすがは伝説級の垂壁課題です。

完登の1トライ前は、この足上げに失敗してフォールしました。

文句なしにサマータイムの核心部だと断言できます。

ここを乗り越えたら、ゴールは目前。

左足を上げて右手のデッドに成功したら、ラスト3m。

油断しなければゴールできることは、すでにお伝えしたとおりです。

そして、ついに完登しました!

総括

上が、ぼくが分析し、実際に完登したサマータイムの全容です。

楽しんだり参考にしたりしていただけたでしょうか。

今回は課題の難易度もさることながら、悪天候に阻まれるなどして、難しいチャレンジとなりました。

過酷な課題のために1日2トライが限度であったことに加えて、長引く梅雨のために岩肌が湿っており、現地に行ったものの本気トライができない日もしばしばでした。

こうして完登できたのも、いっしょに外岩を楽しんでくださったみなさんのおかげです。

支えてくださった方々への感謝の意味でも、今回の記事が外岩クライミングに興味のある方たちに楽しんでいただけるものになっていればうれしいです。

これからも難関課題にチャレンジし、クライマーとしての成長を目指していきます。

最後までお読みいただきありがとございました。

それでは、みなさん

ガンバです!


提供:ボルダリングジムBolBol