
こんにちは。
ボルダリング部顧問の橘です。
前回に引き続いて東京選手権大会のご報告をしたいと思います。
【後編】と題した今回はジュニア男子の決勝戦!
ボル部から見事に決勝に進出した出浦清春選手の登りを中心に、課題の内容を振り返っていきたいと思います。

第1課題
決勝線の最初はこの紫色のルート。

三日月型のボテが連続している様子は、見た目にインパクトもあって観客を惹きつけます。
その外観どおり、まずは思い切りのよいムーブからスタートする必要がありました。

右の持ち感が悪くスタティックには行きづらそうです。

(スタティックに攻略している器用な選手もいましたが)

ところが、この課題の核心はここからでした。
まずは状況をよく見てみましょう。

(提供:東京都山岳連盟)
やりたいことは明白で、左のホールドを取ってから足を入れ替えて態勢を整えることです。
ところが、右手のホールドの悪さに加えて、これらのホールドがコーナーに位置していることから、左への体重移動がきわめて難しくなっています。
腰(重心)が左へ移動するときに、右手のホールドがそれを支えてくれないのです。


じつはこの課題、決勝進出者6名中、1名を除いて全員がここで脱落。
残念ながら清春選手もここを攻略できませんでした。
一方、この課題唯一の完登者が小松橙生選手です。

彼はこのパートを抜群のホールディングと重心管理で攻略しました。
その見事な動きをご覧ください。



決勝の第1課題にして、いかにもバランシーなパートということもあって、このムーブはなかなか選べないでしょう。
しかしながら、その大胆な選択が(結果論にして岡目八目ではありますが)大正解だったのではないかと思われます。


第2課題
続いてはこの緑色のルート。
後半に連続するダイナミックなボテが印象的です。

見切れてしまっていますが、スタートはかなり低い位置にあります。
そこからマントルを返して立ち上がり、左上に連続するボテを狙っていきます。



この大きなポケットはスローパー気味で見た目以上の悪さです。

しかし、問題はここからでした。
このボテの持ち感が見た目以上に極悪。
さらには次がアンダーになっているため、かなり距離を出して取りにいかなければ利いてきません。
残念ながら清春選手はここで時間切れとなってしまいました。


じつは第1課題に続いてこの課題も完登者はただ1名。
その選手を除いて全員がこのパートで苦しみました。
そして、その唯一の完登者が本大会ジュニア男子優勝者の山本天晟選手です。

彼は本大会で唯一、2完登を果たした選手。
この難関課題も非常に落ち着いた登りで攻略していました。


持ち感の悪いボテを事実上スキップしたのです。



じつはこのゴールがたいへん悪く、山本選手はじつに1分以上もの時間を費やしてゴールマッチの方法を模索し続けていました。
しかし、その間もじつに落ち着き払っており、ときおり時計のほうを見やりつつも終始淡々と最適解を求めて試行錯誤をしていました。
この冷静沈着なパフォーマンスは、まさに優勝者にふさわしいと観戦していて感じました。
最終課題(第3課題)
最終課題はこの黒いルート。

これまでの課題に比べて使用されているホールドこそ小ぶりですが、要求される動きは最終課題にふさわしく最もダイナミックです。
まずは挨拶がわりのダブルダイノから始まります。


清春選手は一発で決め、これが彼の順位に大きく貢献しました。
このあとはいったん落ち着いて、足技を駆使したテクニカルなトラバースが始まります。

このあとにマッチします。

先述のとおり、オンサイトで到達できたことがたいへん見事でした。
そして、ここからもう1発ダイナミックに動きます。
このランジがきわめて難しく、さきほどご紹介した山本選手以外は全員ここで脱落してしまいました。


さて。
さきほどちらりとお伝えしたとおり、この課題の唯一の完登者は優勝者の山本選手。
そこで、この課題の成功ムーブもぜひともご覧にいれたかったのですが、当日の雨天の影響から観戦が非常に難しく、その決定的瞬間を押さえることができませんでした……。

総括
かくしてジュニア男子の競技が終了しました。
清春選手の最終リザルトは第4位。
惜しくも表彰台は逃しましたが、昨年から見れば大躍進の結果となりました。
また、彼はこの翌日に行われたリードでも好成績を上げます。
その結果、東京都山岳連盟認定選手に選出されました!

(提供:東京都山岳連盟)
さて、本大会のジュニア男子の最終リザルトがこちら。
蓋を開けてみれば、1位と2位以外は0完登という、たいへん高難易度な出題だったことがわかります。

課題の難易度もさることながら、その内容も踏まえると、日頃からいかにさまざまな課題に触れて経験を積んできたのかが問われる内容となっていたのではないかと思います。
クライミングが大好きで、それでいて研究熱心な清春選手。
これからまた1年間きっちり登り込んで、来年は表彰台の頂きをぜひとも目指してほしいと思います!

その眼差しはたいへん理知的です。
(提供:東京都山岳連盟)
以上で、本大会におけるボル部の活躍はご報告し終えました。
新たな挑戦に向けて、部員・スタッフ一丸となって邁進していきたいと思います!
最後までお読みいただきありがとうございました。
それではみなさん。
ガンバです!
提供:ボルダリングジムBolBol
