【薬理学科に聞く】BCAAのホントのところ【クライマーの教養】

こんにちは! BolBolです!

突然ですが、みなさんはBolBolで扱われているこの商品をご存知でしょうか。


スポーツ用品店や当店以外のボルダリングジムでもよく取り扱われているので、存在自体は広く周知されているのではないかと思います。

すでに愛飲されている方もいらっしゃいますが、一方で、こういうサプリメントには「本当に効くのかな」という疑問がつきものです。

というわけで、今回はそんな疑問にアプローチしてみました!

そのためのご意見番として、前回に引き続き、新スタッフの山口やまぐち りんくんに登場してもらいま

早くもBolBolの人気者になりつつあります。

前回の記事でも紹介しましたが りんくんは薬学科の新4回生

4月からは病院内の薬局で実習をスタートさせる、専門家の卵です。

すでに3年間に渡って座学で学べることをひとしきり頭に詰め込んでいる彼に、今回はBCAAの真実について根掘り葉掘り聞いてみました!

実際に飲む・飲まないはべつにして、スポーツを愛好するうえで身につけたい教養がたくさん詰まった話になりましたので、ぜひとも最後まで読んでみてください!

おそらく薬局内で最も指が強い人物になることでしょう。

BCAAは効果ある?

――いきなり単刀直入に聞いちゃいますけど、BCAAって本当に効果があるんですか?

ありますよ!

あまり大きな声では言えませんが、薬理学の専門知識があると「ぶっちゃけ意味ないだろ」って思うサプリメントにもたくさん出くわします 笑

けれども、BCAAに関しては摂取する意義はある」と科学的に判断できるんです!

実際、BCAAは医薬品にも用いられています。

たとえば、”アミノレバン”という主に肝性脳症時に使われる医療用医薬品があるのですが、これなんかはまさにBCAAが主成分となっています。

加えて、この商品にはシトルリンも含まれていますが、こちらも医学的に血管拡張作用が認められていて、体内に栄養がよく行き渡るように補佐してくれる成分として知られています。

医薬品に使われているということは、「効果を発揮する可能性が極めて高い」と科学的に判断されているということです。

なので、「全然効かない」なんてことはないと思っていただいて大丈夫です!



ーーじゃあ、みんな飲んだほうが良いってことですか? ジムの売上気にして遠慮がちに説明してません?

いや、まあ…… 苦笑

たしかに、メリットばかりじゃないです。

一般に、「薬」になるものにはそれ相応のリスクも存在します。

それに、よく知らないまま飲んでも効果が薄いということもあります。

もう少し詳しく説明するには、そもそも「BCAAとは何か」というところから話さないといけないですね。

BCAAってなんですか?

ーーそれでは、そもそも”BCAA”ってなんですか?

BCAAは日本語では”分岐鎖ぶんきさアミノ酸”といって、いわゆる”必須ひっすアミノ酸”の一種です。

アミノ酸とは”タンパク質”の素材のようなもので、ぼくたちの肉体構成に欠かせない大切な物質です。

そのなかでも、体内で合成することができず、食事から摂取するしかないアミノ酸を”必須・・アミノ酸”と呼んでいます。

BCAAは”必須アミノ酸”のなかでも筋タンパク質(筋肉を構成するタンパク質)の3分の1を占める成分。

要するに、筋肉の素材としてめっちゃ使われている成分です!

アミノ酸がなければ筋肉は構成されません!


ーープロテインもそうですよね?

プロテインもそうですが、成分の状態が違います。

プロテインとは”タンパク質”のことです。

BCAAはタンパク質の素材(アミノ酸)でしたから、要するにプロテインを分解したものがBCAAということになります。LEGOブロックにたとえるなら、”完成した模型”がプロテインで、”個々のブロック”がBCAAです。

なので、BCAAを飲むということは、プロテイン(タンパク質)を分解する手間を省いて摂取しているということになります。

タンパク質がバラバラに分解されたものがアミノ酸。
そのアミノ酸の1グループがBCAA(分岐鎖アミノ酸)です。

プロテインより優秀?

ーーすると、栄養の吸収過程を省略できるBCAAは、プロテインより優秀ということですか?

一概にそうとは言えません。

たしかに、吸収スピードという観点では、消化(分解)を必要とせずにそのまま吸収できるBCAAの方が優れているということになります。

しかしながら、その吸収スピードの速さが裏目に出ることもあります。

なぜなら、アミノ酸は小腸で吸収されるのですが、小腸が一度に吸収できるアミノ酸の量には限度があるからです。

BCAAは分解(消化)の過程をスキップして素早く小腸まで届きますから、一度にたくさん摂取しても吸収量のキャパシティを超えてしまい、大半が無駄になってしまいます。

そこで、もしも大量のアミノ酸を必要とするのなら、プロテイン(タンパク質)として摂取したほうが良いんです。

徐々に分解されながら少量ずつ小腸に届くので、吸収効率が良くなります。

つまり、BCAAとプロテインは適材適所ということです。

大量徐々に吸収したいならプロテイン。

少量を素早く吸収したいならBCAA。

BCAAの効果とは?

ーーずばり、BCAAに期待される効果とは?

最大の効用は筋肉の分解抑制です。

運動中はエネルギーを必要としますが、そのエネルギーを生み出すために、私たちの身体は蓄積されたエネルギー源を活用します。

糖や脂質など、エネルギー源には複数の種類があるのですが、そのうちの1つが筋肉に使われているタンパク質です。

運動によってエネルギーが著しく不足すると、身体は筋肉の分解をはじめてエネルギー源を確保しようとします。

そこで、あらかじめアミノ酸を摂取しておくことによって、十分なエネルギー源が血中に存在している状態にしておきます。

そうすれば、わざわざ筋肉を分解せずとも摂取したBCAAをエネルギー源として活用できる、というわけです。

筋肉分解は疲労を伴いますから、より直接的な効用としては疲労抑制(疲れにくさが実感されることになります。

ボテにヒールフックをするクライマー
ボルダリングはハードなスポーツ。
必要なエネルギーも筋肉への負担も大きいです。

効果的な摂取方法

――効果的に活用するコツはありますか?

タイミングが重要です。

商品のパッケージにも書いてありますが、摂取するなら運動前、または運動中が望ましいです。

BCAAの長所は吸収の速さであり、その効果は運動中のエネルギー不足による筋肉分解(と、身体疲労)を抑制することです。

となれば、運動前や運動中に摂取し、必要なアミノ酸を素早く吸収させることで効果を発揮してくれるということになります。



――こんな人にオススメ!」みたいなことはありますか?

痩せ型の人は摂取するメリットが大きいと思います。

というのも、痩せている人というのは蓄積されているエネルギー源が少なく、それゆえに筋肉分解が起こりやすい人だと言えるからです。

もちろん、体型に関係なく摂取する意義はありますが、BCAAが筋肉分解を抑制するメカニズムを踏まえれば、その恩恵を受けやすいのは痩せている人だと言えそうです。

クライマーは痩せ型が多いので必要性が高いかもしれません!

同じ理由から、食事を摂れていないタイミングで運動する場合にも効果的です。

そういうときはやはり糖や脂質といったエネルギー源が不足しやすいので、筋肉分解が起きやすくなっています。

ぼくは朝食を抜きがちなので、栄養不足を感じたときは摂取するようにしています 苦笑



――逆に摂取するときの注意点はありますか?

すでにお伝えしたとおり、一度に大量に摂取しても意味がありません。

それどころか、長期的な過剰摂取は身体に害をもたらすリスクもあります!

アミノ酸は”アミノ基”と呼ばれる構造を持っているのですが、これは肝臓で尿素に変換されるため、過剰な摂取は肝臓への負担が大きく、それが続くと慢性肝障害などを引き起こしてしまう危険があるのです。

なので、「疲れたくないからじゃんじゃん飲もう」というのは絶対に避けたほうが良いでしょう。

同じことはプロテインにも言えますので、十分に注意してください!

まとめ

以上が、理系クライマー凛くんによるBCAA解説です。

今回の内容をまとめてみましょう!

・BCAAは医薬品にも使われている。

・その効用は筋肉分解の抑制

・効果的な摂取タイミングが運動前・中

・一度に大量の摂取は無意味
 どころか、長期的な過剰摂取は有害!

即効性がほしいならBCAA
(大量にほしいならプロテイン)


日々ハードワークに取り組むクライマーの皆さんは、ぜひとも参考にしてみてください。

さて、今回の記事で大活躍してくれた凛くんは、ジムでの課題づくりでも実力を発揮してくれています。

薬理学とクライミングをこよなく愛する凛くんの特製課題集が現在公開中です!

みなさん、どんどん挑戦してみてください!





提供:ボルダリングジムBolBol