【激辛】第8回スポーツクライミング東京選手権【ボルダリング】

橘

こんにちは、橘です



ボルダリング都大会を見て来ました!


葛飾区まで行ってまいりました!


今回はその模様を課題の内容を中心にお伝えしていこうと思います!

決勝課題を総チェック!

今大会は見どころありまくりの内容になっていました。

予選からご紹介したいのですが、紙幅の都合および読者の方々のお時間を考慮した結果、すべてを載せることは難しいと判断しました。

そこで、おそらくはみなさんが一番気になるであろう決勝課題に絞ってお伝えします。

そのかわり、合計12本の決勝課題を全てお伝えしてまいります!

ジュニア男女の決勝課題

まずはジュニア部門からお伝えしてまいります。

この区分では男女が同じ課題に挑みました。

ジュニア第1課題

下からのホールドを押さえつける、いわゆる出前持ちがぞんぶんに用いられるバランシーな課題です。

ジュニア男女決勝の第1課題の全体像

どこのジムにでもある課題ではないので、さまざまなムーブをきちんと練習してきたかどうかが試されたと言えそうです。


また、瞬発的に立ち上がると同時にトゥフックで安定を図る2手目も曲者でした。

登っているのは松浦朱希選手。ジュニア女子の優勝者です。
あとはこのように下から押さえつけての横移動。
微妙にかぶっている壁なので吐き出されないようにするのが大変そうです。

ジュニア第2課題

第1課題同様、2手目取りがスピーディー&スパイシーな課題でした。

ジュニア男女決勝の第2課題の全体像

1手目をアンダーで取ったところから、大きく離れたボテを取りにいかなくてはなりません。

似たような内容は予選でも出題されましたが、決勝だけあって飛び出し後の取り先がとてもシビアです。

クロスで左手だとホールドの向きが悪いようです。

女子の完登者は1人もいない難問でしたが、男子は7人中5人が攻略しました。


そのうちの1人が島内悠吾しまうちゆうご選手。

BolBol主催のキッズコンペで優勝したこともある有力クライマーです。

ランジを狙う島内悠吾選手
しっかりと見据えて……
右手で止めました!
後半も安定感がありました。

ジュニア第3課題

またしてもハイレベルなランジ課題です。

ジュニア男女決勝第3課題の全体像

初手に向かって右側に大きく飛び出すのですが、ホールドが悪いために振られに耐えることが難しいという罠があります。

本大会3位の長崎莉央選手。素晴らしいランジで距離は十分ですが……
このように振られ落とされてしまいます。

この課題、おそらく正解ムーブはコーディネーションランジです。

すなわち、振り戻しが来るまえに右手をボテ先のホールドに送るのです。

実際、完登者の多くはそのような動きで解決していました。



橘(無能)
橘(無能)

なのに、そんな決定的瞬間をカメラに収めることができませんでした。
本当にすみません……

ジュニア第4課題(最終課題)

いよいよ来ました、最終課題。

男女12名中、ゾーン獲得者が1名のみという超極悪な課題です。

ジュニア男女決勝最終課題の全体像

そのあからさまなスタートホールドの配置は、なにをさせたいか一目瞭然。

走って乗ってトゥフックです。


しかし。



そのトゥがまったく届きません。

女子準優勝の堀田成美選手のトライ。

こんな感じで、右足の距離感がかなり遠いです。

もっとも、近すぎても利きづらいのがトゥですから、セッターさんもだいぶ苦慮されたことでしょう。



そんな最終課題の唯一のゾーン獲得者が、ジュニア男子準優勝の上原一剣うえはらいっけん選手です。

本当に見事にビタッと止めました!
ゾーンをきっちり獲得し……
バランシーなルートを冷静沈着に攻略していきます。
完登まで本当にあとわずかでした!

少年・成年女子

続いては中学3年生以上の女性クライマーたちが挑んだ課題を見ていきましょう。


第1課題と第4課題(最終課題)の完登者は12名中なんと0名。


すなわち、優勝者でさえ2完登に留まった非常に高難易度の出題でした。

女子第1課題

女子決勝最初の課題は、ジュニア最終課題の類題に思えました。

すなわち、スピーディーなビタ止めスタートからのバランシーです。

女子決勝第1課題の全体像

先述のとおり、完登者は皆無でした


のっけから超ハードな内容でしたが、それでも決勝進出者の半数にあたる6名がゾーン獲得。

その1人は、少年女子で準優勝を果たした長谷川颯香はせがわそうか選手です。

長谷川颯香選手の登り。
ビタッと止めて。
ぐぐっと身体を押し上げていき……
ゾーンをしっかり獲得!
完登目前までいきました。

女子第2課題

続いては比較的オーソドックスなスラブです。

女子決勝第2課題の全体像

デリケートなトラバースからの極小ホールドでの立ち上がりという、スラブによくある構図。


しかしながら。

向かい合うように設置された2つのデュアルテクスチャーなボリュームが曲者でした。

アップで見るとその悪さがよくわかります。


いかがでしょう?


厚みがなく、しかもフリクション面が著しくなだらかになってるため、もはや壁に描いた絵にしか見えません


さらに。

ボリュームについたゾーンホールドも厄介です。

ボテについたホールドの持ち方
ボリュームについているホールドもデュアルです

こんなふうに、ツルツルな面に指をかけなくてはなりません。


「つける向き間違えてない?」

と、心のなかでツッコミを入れた観戦者はぼくだけではないはずです。


しかしながら。

この課題を1撃した猛者が2名いらっしゃいます


そのうちの1人は、荒居美咲あらいみさき選手です。

荒居美咲選手が登っている様子
絵みたいなボリュームに左手きっちり利かせてます。

それまではパワフルな登りが特徴的な選手だと思っていたのですが、ここに来てものすごく繊細なボディバランスの持ち主であることが判明しました。

きっちり完登。

そして、う1人は平野夏海ひらのなつみ選手!


国内ユース優勝、世界ユース準優勝の実力者です!

平野夏海選手が登っている様子

トラバースエリアでの足の入れ替えのスムーズさも、回転を制する体幹と保持力の強さも、ともに圧巻でした。

神経質な足の入れ替えもお見事
この姿勢になっても全然回転しない左手保持と体幹の強さ

女子第3課題

続いては打って変わってムキムキなフィジカル課題でした。

女子決勝第3課題の全体像

ゴール前のクロス飛び出しから両手での挟み込みがなんともマッチョなこの課題。


しかしながら、一撃完登者が3名もおりました。

そのうち1名はさきほども登場した少年女子準優勝の長谷川選手。

そしてもう1名は、同じく少年女子の優勝者・石井秀佳いしいみしか選手です。

石井みしか選手が登っている様子

そして最後は、菊池咲希きくちさき選手。


2022年ボルダリングジャパンカップの決勝進出者です。

菊池咲希選手が登っている様子
BJCの決勝を生で観ているような心地になります。
このとき手が外れかけたのですが、意味わからん保持力で振られている最中に持ち直してました
まだ成人したばかりだそうですが、貫禄が尋常じゃありませんでした

女子第4課題(最終課題)

さて、大波乱の最終課題。

誰一人として初手さえ取れなかった鬼課題です。

少年女子準優勝の長谷川選手

狭い空間に身体をねじ込み、体勢を整えて手前に飛び出すこの課題。

さすがにセッターさんの愛が重すぎたようです。

少年女子優勝の石井選手。窮屈そうでスタートも一苦労です。
国内屈指の実力者、BJC6位の菊池咲希選手も大苦戦です。
惜しいトライは何度もありましたが……
どうしても止まらず。

結局、全員が初手に全時間を費やしたわけですが、そのなかでも印象的だったのは平野選手。

全決勝進出者のなかで唯一、背面キャッチを試していました。

ほかの選手同様、背面跳びを一通り試したあとで。
背面キャッチに挑戦。

保持することこそできませんでしたが、時間いっぱい使って諦めずに試行錯誤し続けるその姿は感動的でした。

ひょっとすると、最終課題を通じて選考委員の方たちはメンタルを観ていたのかもしれません。

少年・成年男子決勝

最後に、中学3年生以上の男性クライマーたちが挑んだ課題を見ていきましょう。

女性クライマーに比較すれば良好だったリザルト。

しかしながら、少年・成年それぞれの3位までの選手の平均完登数が2.8本だったのに対して、それ以外の選手では0.5本。

つまり、本当のトップしか登ることの許されない超難易度な出題だったと言えます。

男子第1課題

男子は比較的クラシックな課題で幕を開けました。

外岩にもありそうな真っ向勝負な印象です。


ただし、その強度はさすがに男子決勝。

初手は遠くて向きの悪いカチへの左手送りですが、この時点ですでにめちゃくちゃキツそうでした。


これをあっさり一撃したのは、成年男子優勝者の北江優弥きたえゆうや選手

国際大会への出場経験も豊富な実力者です。

抜群の安定感で送りに成功し……
狭いところも巧みに処理。
あまりに簡単そうで、「じつは楽なのかな?」と錯覚しました。

男子第2課題

続いては、スピーディーな立ち上がりからのバランシーという本大会の頻出パターンです。

トライしているのは少年男子第4位の上原悠樹選手

初手はカンテ部分についたホールドですが、右側に保持したりフックしたりできるホールドがありません。

そのため、スタート時に右手で保持しているホールドに素早く右足を乗せる必要があります。


この課題唯一のオンサイト成功者が、成年男子準優勝の鷹見真洋たかみまひろ選手です。

タカミマヒロ選手が登っている様子
スタートポジションから……
立ち上がって左手と右足で同時に押さえます。
向きの悪いゴール取りもスピーディーなオポジションで解決

男子第3課題

ここに来て、ついにえげつないランジ課題が登場しました。

初手の位置とホールドの薄さにご注目ください。

いま、上村選手が磨いているホールドが初手です。

ご覧いただければ一目瞭然。

奥まったスタートから手前に背面跳びです。

飛び出しているのは成年男子3位の大髙伽弥選手

ご覧ください。

背中と床がほぼ平行です。

完全に背面跳びになっていますが、棒高跳びとは違い、これでマットに落ちれば良いというわけでないのだから驚きます。


さらに驚くべきは、このランジを男子12名が全員成功させているという事実です。

写真は少年男子5位の吉井玲雄選手

このように、あれほどの背面跳びの衝撃をカチだけできっちり止めています。

男子のトップクライマーたちの圧倒的フィジカルを改めて思い知らされる課題でした。

男子第4課題(最終課題)

ラストはド派手なダイナミック課題が出てくるかと思いきや、意外に落ち着いた課題でした。

しかしながら。


ものすごいポーズを取らされます。

それがこちらです

いかがでしょう。

ぼくがルート開拓者だとしたら、この課題には絶対に「鯉のぼり」と名付けようと思います。


スピード感こそありませんが、じんわりと強烈な負荷に襲われる、まさに最終課題に相応しい内容です。

完登者は成年男子の優勝の北江選手・準優勝の鷹見選手の2名のみでした。

しかし。

完登こそしなかったものの、惜しいトライを見せたのが、少年男子優勝者の田宮瑛人たみやえいと選手です。

鯉のぼり現象が落ち着いたところで足をボテに置き……
極小ホールドに立って登っていくパートに移ります。
上でもそこそこすごい姿勢

完登こそなりませんでしたが、見事なバランス感覚と体幹の強さでした。

少年・成年男子は、思いのほか落ち着いた課題が多かったのですが、それは「ダイナミックな動きはできて当然」という選考委員側の認識があったからかもしれません。

それゆえに、強烈なフィジカルが必要になりつつも、スピードで誤魔化せないバランシーな内容になっていたかと思います。

総括

今大会は「辛かった」の一言です。


実際、それは数値にも表れており、決勝を3完登以上できたのは総勢36名中わずかに5人でした。


「日本クライミング界の未来を担うのだからこれくらい出来ないとなッ!」という運営スタッフの方々の期待とプレッシャーをびしばしと伝わってきました。

大髙選手と平野選手。BJCを見ているような豪華な絵面です。

とくに、女子にとっては過酷な闘いだったように感じます。

先述のとおり、最高完登数でも2完登ですから、そのレベルの高さが数値からも伺えます。

昨年引退された野口啓代選手を続く国際的クライマーを求めているのか、フィジカル面で男子に引けを取らない水準を要求しているように感じられました。

BolBolボルダリング部の選手も奮闘しました

なかでも、ジュニア女子はかなりの苦戦を強いられていました。

課題の内容からして完全に中学生男子に合わせていたと思われます。


実際、予選は1位の選手でも6課題中3完登。

決勝にいたっては優勝者以外なんと0完登。


正直、泣かずに最後までやり遂げたらそれだけで表彰モノだったと思います。

泣かずに頑張りました


というわけで、非常にハイレベルな登りに興奮しっぱなしの1日となりました。

中学生ボルダリング部の顧問を務める身としては、今回の大会を参考にして、今後の練習方法などをしっかりと考えていきたいと思います!



出場したクライマーのみなさん。

素晴らしい登りをありがとうございました!


提供:ボルダリングジムBolBol