こんにちは。橘です。
前回は都大会の決勝の模様をお伝えしました。
ありがたいことに、この記事がたいへん好評でして、「コンペ課題を見てみたい」、「実力者たちの登りを見たい」というニーズの大きさを痛感いたしました。
そこで。
前回は紙幅の都合で省略した予選の模様を、今回は補遺としてお伝えしていこうと思います。
とはいえ、予選もすべてをお見せすることは難しいので、印象的だった課題をいくつかピックアップしてお伝えしていこうと思います。
なお。
まだ本編(決勝戦レポート)をご覧になられていない場合、先に気になるほうからチェックをお願いします!
ジュニア男女
今大会は総じて瞬発的な動きの要求が多いと感じましたが、それはジュニアの部でも同様です。
予選6課題中4課題はどこかしらでランジが必要になっておりました。
それゆえ、女子は大いに苦戦を強いられたようです。
実際、決勝進出者の平均完登数は男子が4.5本に対して女子は3.1本。
さらに、女子は決勝進出者を除けば全員が2完登以下でした。
さて。
そのなかでも典型的だと感じられたのが第4課題。
初手でランジを決めたのちにじわじわ登るという、本大会の頻出パターンでした。
この課題、女子の完登者は優勝者の松浦朱希選手のみ。
一方で、男子は決勝進出者のうち5名が完登しているものの、それ以外で登れた選手は1名のみ。
つまり、トップ争いの分水嶺となった課題と言えます。
この課題を制した1人に、小松橙生選手がいます。
当店BolBolが開催したコンペでも高い実力を見せてくれた将来有望なクライマーです。
続いて。
完登者たった1名の最難課題をご紹介します。
こちらがその予選第6課題です。
見るからにキツそうなポケット地獄。
後半はポケットというよりカチです(ポケットカチ?)。
この課題の唯一の完登者が笹原蓉翆選手。
本大会、予選・決勝ともにぶっちぎりのリザルトで第1位に輝きました。
このように、全体的にダイナミックな動きが目立つ予選でした。
「将来トップを狙っていくならこれくらいの動きはできないとな!」というセッターさんから小学生・中学生に向けた父性全開の親心を感じました。
少年・成年女子
リザルトだけ見ると、少年・成年女子が最も好成績でした。
とはいえ、課題が簡単だったという印象は決してなく、選手たちが優秀だったのだと思われます。
実際、課題はジュニアに引き続きダイナミックな動きが要求される内容でした。
なかでも、第4課題はなんとダブルダイノでした。
この課題、完登できた選手はわずかに2名。
日本を代表するクライマーである菊池咲希選手と平野夏海選手のみでした。
そんな日本のトップしか登れない高難易度の課題を前にして、多くの選手が苦汁をなめました。
今年のBJCで古典的なダブルダイノが出題されたことは記憶に新しいですが、それを意識した内容だったのかもしれません。
同様に。
第5課題もダイナミックな動きが要求される課題でした。
動きの大きさ自体はダブルダイノほどではありませんが、出づらさと取り先の悪さが印象的です。
バランスの悪い状態からカチを取りにいかなければなりません。
ちなみにこの課題、さきほどご紹介した平野選手が登れていません。
前半パートはさすがの身のこなしでしたが、難所は後半にも控えていました。
BJCで4位という実績を持つ選手が登れなかったという事実からも、予選からハイレベルな出題だったことが伺えます。
見ていて思ったのですが、全部門総じてゾーン手前でダイナミックな動きを要求されることが多かったので、メンタル的にもかなりタフな闘いになったであろうと思います。
さて。
最初にご紹介したダブルダイノの課題は完登者が菊池選手と平野選手だけだったとお伝えしました。
が、完登者がこのお二人のみだった予選課題がもう1つあります。
それがこの第6課題です。
内容としては、ジュニアの第6課題に近いものがあるように思います。
比較的クラシックな保持系課題です。
保持系とはいっても、各所で高度な足さばきが要求され、クライマーとしての高い基礎力が試される出題だと言えそうです。
先述のとおり、この課題の完登者は菊池選手と平野選手の2名なのですが、両者ともになんとオンサイトを決めていたんです。
というわけで、カメラを向けたときにはすでにお二人とも完登してしまっていた後でした……
少年・成年男子
最後に、少年・成年男子を振り返ります。
男子の予選課題も本当のトップしか登れない激辛難易度でした。
その事実はリザルトが傍証してくれています。
結果を見てみると、決勝進出者しか登れていない課題が3本。
うち、本大会の優勝者ただ1人が登れただけという課題が2本ありました。
あまりの高難易度のために1本も登れない選手が続出。
選手少年・成年総勢22名中9名の選手が6本の課題のいずれも落とせない状況となりました。
つまり、出場した選手の約4割が0完登だったのです。
こうした事実から、予選から高難易度な出題であったことが伺えます。
さて。
そんな激辛予選課題のうちから印象的だった2課題を紹介します。
まずはこちら。
22名中7名が完登した第3課題です。
挨拶がわりのランジから始まり、カチを頼りにデルタボリュームをがしがしと登っていく内容になっています。
男子の課題はこのように、パワフルさのなかにも繊細な”利かせ”を要求してくるような課題が多かった印象で、この課題はまさに典型的でした。
ご覧のとおり。
最初からかなりパワフルです。
本編でお見せした第3課題に比べれば取り先のホールドはまだ持ちやすそうですが、それでもこの大きな振られ。
”挨拶がわりのランジ”と申しましたが、「おはよー」みたいな気軽な挨拶ではありません。
「ッしゃぁあござぁあぁすッ!」と絶叫するみたいな体育会系挨拶です。
そして。
このランジを決めたあとは、デルタボリュームをじわじわ登っていくパートが始まるわけです。
この上部パートを制して完登を決めた選手の1人が、予選3位通過の石原凛空選手。
リードユース日本選手権準優勝の実績もある実力者です。
続きまして。
完登者がわずかに1名だった第6課題をご紹介しましょう。
この課題は非常にドラマチックでした。
というのも、みなさん非常にムーブに迷っていたからです。
このように、最初はジャミングを試みる選手も多かったのですが、なかなかそのあとが続かず。
ムーブ選択に悩む選手が続出しました。
そんな状況に風穴を開けたのが小俣史温選手。
この課題唯一の完登者であり、少年男子の準優勝者です。
この小俣選手のトライが突破口となり、彼と同じムーブで攻略を狙う選手が続出しました。
ほかの選手の登りを参考にできるコンテスト方式ならではのドラマを見ることができた名課題として、個人的にはとても印象に残りました。
総括
というわけで、今回は本編としての決勝レポートに引き続き、補遺としての予選レポートをお伝えしてまいりました。
予選も決勝に勝るとも劣らない熱戦で、あっちでもこっちでも名場面だらけな激強ムーブの見本市状態でした。
これほどハイレベルな予選を勝ち上がっての決勝戦。
まだご確認でない方は、以下からぜひともこちらもチェックしてみてください。
いやあ。
ボルダリングって、本当に素敵ですね。
選手のみなさん。
素敵なクライミングをありがとうございました!
提供:ボルダリングジムBolBol