ボルダリングの基本の”ホ”

こんにちは! BolBolです

この記事は「ボルダリングの基本」シリーズ第2弾です!


初心者・初級者の方にぜひとも押さえていただきたいボルダリングの基本中の基本をお伝えしてまいります。

”正解”を一方的にお伝えするのではなく、しっかりとご納得していただけるよう、理論からご説明していきます!

前回の記事では「手の基本」の力学的原理をご説明しました

中級者以上であれば経験則として自然に実践しているようなことでも、理屈を改めて考えてみると新しい発見もあると思いますので、経験の長短を問わずにぜひご一読ください!


なお、シリーズ第1弾の記事は以下のリンクからご覧いただけます

まだご覧になられていない場合は、より興味のあるテーマから先に見ていただければと思います!

”足(脚)”の基本

シリーズ第1弾では手の使い方をご説明しました。

今回は足(脚)の使い方を見ていきましょう。


ボルダリングでは「いかにして足(脚)で体重を支えるか」が重要になってきます。

初心者のうちは前腕がすぐに音を上げてしまいますが、それは腕が未熟であること以上に、脚力を使えず手だけで登っていることが原因です。

したがって、足(脚)を上手に使うことができれば、疲れづらい効率的な登り方ができるということになります。

とくに傾斜では足をしっかり残すことが大切です

また、一般に脚力は腕力の何倍もあります

このことは、逆立ちした状態から2本の腕でジャンプすることは難しいのに、両脚で飛び上がることは容易であることからも明らかです。

したがって、腕力だけに頼るよりも、脚力を上手に使えたほうがパワフルな登りができるということにもなるのです。

ダイナミックな動きには下半身の力が不可欠です

つま先を使って”点”で乗る

ボルダリングでは”つま先立ち”が基本です。

それも、拇指球(親指の付け根)で支えるマイルドなタイプのつま先立ちでは済まされません。

バレリーナのごときガチなつま先立ちが要求されます。


このような”ガチつま先立ち”をしなければならない理由はいくつかあるのですが、最も単純な理由としては「そうしなければ乗れないほど小さい足場が存在する」ためです。

こんな足場にはつま先以外で乗りようがありません。

もっとも、初心者のうちはこれほどシビアな足場に立たなければならない機会はまれでしょう。

しかし、レベルが上がってくるといつかは「つま先でしか乗れないような足場」と対峙しなければなりませんから、足場の広さに甘えずにピンポイントに乗ることを常に心がけておくと良いと思います!

大きい足場でも1点を狙いましょう

もちろん、”つま先”の意識は強傾斜でも重要です。


強傾斜の場合、足場は「乗るもの」というよりは「引っかけるもの」です

そうしなければ、足が簡単に外れてしまいます。


そこで、「引っかける」ためにはつま先を利用するのです。

つま先だと上手くひっかかります

ところで、当然のことながら。


つま先立ちは楽ではありません


クラシックバレエの経験者でもないかぎり、初心者のうちはちゃんとつま先立ちになること自体、相当に難しいでしょう。

しかしながら、だからこそ意識的に訓練をして、つま先立ちをしっかり行えるためのバランス感覚と筋力を養っていく必要があります。

最初から完璧にやる必要はありませんから、まずは心がけるようにしていきましょう!

”面”で乗る必要性と摩擦力

つま先を使って”点”で足場をとらえることが基本だとお伝えしたばかりではありますが……

しばしば足裏を使って”面”で乗る必要性が説かれる場合もあります。

その代表的なシーンがボテを踏むときです。

”点”というよりは、べったりと”面”で踏んでいます。

このようなシーンでは。


接地面積を大きくしたほうが強い摩擦力を得られるぞ!


と言われています。




ですが。

この摩擦力と接触面積の関係、じつは物理学のいわば「未解決問題」であり、専門家の間でも意見が分かれているのが実情です。


学生時代、物理の授業で「摩擦力は接触面積によらない」なんて習った記憶がある方もいらっしゃるかもしれませんが、その法則についてさまざまな議論がなされているようです。



出典:Wikipedia/摩擦(投稿:Mets501氏):2022年4月8日現在


したがって、「ボテには足をべったりつけた方が良い」というクライマーの間での経験則的なテーゼに力学的な証明を与えることができたら、それは”世紀の大発見”だと言えます!

理系クライマーの方はぜひノーベル賞にチャレンジしてみてください!

受賞の際にはBolBolブログへの言及をお願いします!

ノーベル賞に興味のない方も、足の置き方”には状況に応じて例外や異論があり得るということは心の留めておくようにしてください。


いずれにせよ、一般に言えることは、摩擦力は垂直抗力に比例するということです。


したがって。

”点”で踏むにしろ、”面”で踏むにしろ、接触面に対してしっかりと押しつける意識が重要であることはほぼ間違いないでしょう。

「面で踏むほうが良い」と言われる理由も、そのほうが接触面に対して垂直な力のかけ方を意識しやすいからなのかもしれません。

”乗り込む”意識とその方法

さて、ここからは「足の置き方」ではなく、「脚力の使い方」について考えていきましょう。


「登る」ことは「立ち上がる」の連続です

とくに初心者のうちは「腕で引き上げること」が登ることだとイメージしがちですが、実際には「足で立ち上がること」を繰り返した結果として、身体を高い位置に移動させていくことになります。


したがって、「高い足場に乗り込んでいく」という動作を効率的に行なうことが、クライミングの上達には不可欠となります。


それでは、その具体的な方法をご紹介します


今回は椅子を使って実験してみましょう。

できる方はいっしょにやってみてください。(段差でもOKです)

さて、今からこの椅子に乗り込みますが……

以下の2通りを試してみます


1)後ろ足で蹴り出して立ち上がる

2)前足に体重をかけて立ち上がる


はてさて。

どちらのほうが簡単でしょうか。

体重を後ろ足にかけて(左)、蹴り出して立ち上がる(右)
まずは前足に体重をかけて(左)、前足で立ち上がる(右)

実際にやってみた方はおわかりでしょう。


前足に体重をかけたほうが楽です!



これは第1弾でも言及したテコの原理(力のモーメント)で理解できます。
※それが全てではありませんが、主要な原理の1つです


すなわち、支点(足)と力点(重心)の位置の距離が重要になっています。

後者のほうが、足と重心の位置が近くなるためにより小さい力で身体を持ち上げることができるという理屈なのです。

後ろ足重心(左)と前足重心(右)。支点と力点の位置に注目。

それでは。

この原理が登るときにどう利用されるのかを見ていきましょう。


次のシーンをご覧ください。


狙っているホールド(A)はほぼ真上にあるので、そのまま上に向かって立ち上がってしまいたくなります。

しかし、このまま立ち上がってしまうと、重心と足場(B)との距離がありすぎます。

その結果、立ち上がりづらく、腕の力に頼ってしまうことになります。


そこで、足場(B)に重心を近づけることを意識します。

最短距離の軌道から離れるため遠回りに感じますが、このほうが立ち上がりやすいので、結果的には楽に次の手が取れるのです。

円を描くような軌道を意識して立ち上がります

以上が原理の応用方法になります。


が。

いつもこの原理が使えるとはかぎりません。


たとえば、次のシーンのように、足場とまったく反対方向のホールドを取りにいく必要のあるときなどは、今回の原理の利用は難しくなります。


とはいえ。

脚力を使って登る意識が大切なことに変わりはありません。


腕で一生懸命引くのではなく、足で蹴り出すようにして手を伸ばしていきましょう。

膝の伸び具合に注目してください

まとめ

シリーズ第1弾である「手の基本」に続き、第2弾である今回は「脚の基本」をお伝えしました。

理論から丁寧にご説明したつもりですが、逆に理屈っぽくてわかりにくいと感じさせてしまったかもしれません。


理屈がわからなかった場合は、とにかく結論のみを把握していただき、実際にご自分で実践してみてご納得ください。


理論から理解できた方も、最終的には実践を経て獲得した”感覚”が大事ですから、頭でわかるだけでなく、しっかりと体に染み込ませていただきたいと思います。


さて。

次回の基本シリーズ第3弾では、いよいよ身体全体の動かし方についてご説明します。

これをもって、ボルダリングをするうえでの最低限の基本技術についての説明は完了しますので、ぜひチェックしてみてください!


基本シリーズ第1弾をチェックしていない方は、ぜひこちらもどうぞ。


さらに、こうした基本を踏まえたうえで、より高度な技術として各種のムーブを学んでいく必要もあります。

こちらの記事でご説明していますので、ぜひチェックしてみてください。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

それでは、ガンバです!


提供:ボルダリングジムBolBol