ボルダリングの基本の”キ”!

こんにちは! BolBolです!

この記事では初心者・初級者の方にぜひとも押さえていただきたいボルダリングの基本中の基本をお伝えしてまいります。

こうした”ボルダリングの常識”を無視して壁を登ることは、半ソデ短パンで雪山に行くようなものですから、しっかりと正しい意識と知識を身につけて、合理的なクライミングを楽しめるようにしていきましょう!

高度な動きも、その根底に基本があってこそ成立します。

なお、この記事では”正解”を伝えるだけではなく、「なぜこれが妥当なのか」という理論まできっちりとご説明します。

なので、ちょっぴり理系チック(力学的)な内容となっております。

物理は苦手なんだよな、という方は読みづらいかもしれませんが、その場合は「なにをすれば良いのか」というところだけ把握していただき、理屈だけに頼らずにご自分で実践してみてご納得ください。

”手”の基本

クライマーにとって、自分の”手”は最大の武器であり、クライミングにおける必須ツールです。

慣れ親しんだ自分の手とはいえ、それを使いこなすためにはいくつかの重要なポイントを押さえなくてはなりません。

そこでまずは、”ふつうの手”から”クライマーの手”に変えていくための、意識の変革を行なっていきましょう。

”手のかたち”を考える

物心ついた頃から、私たちは自分の手でたくさんのものを掴んできました。

ですが。

意外と不慣れなのが「引っかける」という持ち方です。

鉄棒やうんていを”握り込んだ”経験はあるでしょうが、なにかに手を引っかけて体重を支持するという行為については、思いのほか素人なのです。

そこで、まずは「引っかける」のに適した手のかたちをしっかり理解しておきましょう。

その基本形がこちらです。

ポイントは次の2です。

1)関節を自然な角度で曲げておくこと。

2)指同士のすき間をつくらないこと。
(そのために親指を人差し指に押し付ける場合もあります)

なぜこれが合理的なのか、図解していきます。

まずは”テコの原理(力のモーメント)”です。

一番左の例では指がまっすぐになっています

支点と力点の位置が遠すぎるので、支持するためにより強い握力が必要になってしまいます。

一方で、一番右の例では指を折りすぎです。

支点と力点が近くて良いのですが、関節部への負担が大きいのがネックです。

そこで、真ん中の例がちょうど良いのです。

支点と力点がほどよく近く、関節部への負担も穏やかです。

2つ目の原理は指への荷重分布です。

左の例では指が開いた状態になっています

この状態では、力をかけたい方向に対する各指の力の向きの不一致が発生しやすく起こしやすく、荷重の大きさに偏りが生じて、一部の指に強烈な負荷がかかります

一方、右の例では指が閉じています。

この状態なら、力をかけたい方向と各指の力の向きが一致しやすいため、指への荷重が均等化し、一本あたりの負担が小さくなります。

以上の理由から、自然なアーチ形状が、クライマーの手の基本形となります。



もっと学ぶ

例外も多い”手のかたち”

ここまで説明しておいてなんですが……

”手のかたち”の正解は状況によって変わります。

ホールドの形状や行いたい身体動作、さらには個人の能力によって臨機応変な変更が必要なのです。

実際、さきほどは”NGな持ち方”としてお伝えした方法も、状況によっては”理想的な持ち方”となります。

薄いホールド(カチ)の保持に有効な”クリンプ”
わしづかみにして力を全方位からかける”パーミング”

というわけで。

”手のかたち”に絶対的正解はない。

ということを忘れないでください。





だったらなんで教えたん?

と、思わせてしまったかもしれません。

例外が多いにもかかわらず”基本形”をお伝えした理由がちゃんとあります。

それは。

「手のかたちを意識する」という心構えを持っていただきたい

と、思ったからです。

クライミングの上達には「手のかたちへの意識」が欠かせないので、それを考えるきっかけとして、今回ご紹介した内容を心に留めておいていただけるとうれしいです!

力をかけやすい方向を考える

次に、ホールドにかける力の向きを考えます。

次のホールドは、どの方向に力をかけやすいでしょうか?

イメージできたでしょうか?

正解は”下方向”や”手前”です!

ぶら下がるようにして持てますし……
壁から離れる方向にも引っ張れます

続いて、第2問です。

同じようなホールドが横向きについている場合はどうでしょうか?

この場合、下方向に力をかけることは難しいので、左方向に引っ張るのが自然になります。

同時に、左方向に力がかかるよう身体の向きも調整する必要があります。


さらにべつのタイプのホールドを見てみます。

下方向にも横方向にも力をかけられそうですが、先ほどまでとは決定的に違う点があることに気がつけるでしょうか。

ドーナツみたいなホールドです。

これは手前に引けないタイプです。

さきほどまでのホールドとは違い、持つところがなめらかで、手前に向かって引っかけることができません。

この場合、腰をしっかり落とすことが重要です。
腰が上がってしまうと、どうしても手前に引きたくなるからです。

腰の位置に注意して観察してください
手前に引けないので腰を上げると苦しくなります

最後に、これとは真逆のケースを見てみましょう。

次のホールドは上方向に力をかけやすい形状ですから、むしろ腰(重心)を高くしたほうが良いことになります。

このような持ち方を”アンダー”と言います。

このように、力のかけやすい方向を意識することで適切な姿勢が見えてくるので、しっかりと気を配るようにしていきましょう。

全力で取りにいかない!

突然ですが、身近にある適当なものを利き手で取ろうとしてみてください。

……。

……いかがでしょう?

”自分の身体”や”利き手と反対の手”に意識を残していたでしょうか?

おそらく、取ろうとした対象と、それに向かって動かした利き手とに、全神経を持っていかれたのではないかと思います。

ここに、日常とクライミングにおける「取る動作」の意識の違いがあります。



クライミングでは「取りにいく」ことに全集中してはいけません!

不安定な状況で対象に手を伸ばさなければいけないクライミングにおいては、身体自体と、それを支えている手に意識を残しておく必要があるのです。

残す手にしっかり力が入っています

これは初心者が陥りやすい誤解の1つです。

落ちてしまったとき、初心者は。

取れなかった……

と、考えがちです。

しかし実際は、持ててなかったから落ちるというケースが多いです。

したがって、次の手が取れなかったときには、「ちゃんと持ち続けられていたかどうか」と自問するようにしてみてください!

まとめ

さて、今回はクライミングをする際の「手」の基本について見てきました。

どれも地味なことばかりだったので、いまいちピンと来なかったかもしれません。

しかしながら、読んでもいまいちしっくり来なかったのだとしたら、その感想は自然なものですし、ある意味で正しい反応です。

スポーツにおいて大切なのは理屈それ自体よりも、経験に裏打ちされた実感であり、理論・理屈はあくまでそうした実感を得るためのきっかけを与えるにすぎません。

なので、今回ご説明した原理に納得した方も、そうでない方も、理論を鵜呑みにせず、自分の身体で実践してみたうえで、ご納得いただけるとうれしいです。

ぜひ実際に試してみて、ご自分の体感として納得してください!

ところで。

「手の基本」があれば、当然ながら「足の基本」も存在します

以下の記事は基本シリーズ第2弾ですので、合わせて確認してみてください。



また、こうした基本を押さえたうえで、より専門的な技術として”ムーブ”を習得することも必要になります。

以下の記事では、上達を目指すうえで確実に押さえたい基本的ムーブをご紹介していますので、こちらにもぜひ目を通してみてください。



最後まで読んでいただきありがとうございました。

それでは、ガンバです!


提供:ボルダリングジムBolBol