【完登数最多でも敗北】ボルダリングコンペの新ルール!!



2025年からルールが改変!

公式コンペの順位決定について『採点方式』と呼ばれる新ルールが採用されました。

今回はこのルールについて丁寧に解説していきたいと思います!

神奈川カップ2025のワンシーン。
同大会は新ルールで行なわれました。


なお、今回の記事はボルダリングコンペの旧ルールが理解できている方に向けての説明となります。

「そもそもボルダリングコンペというものがよくわからない」という方はまずはこちらの記事からお読みください!




まずは具体例で解説!

ルールブックに記載されている抽象的な規約はいったん置いておき、まずは具体的なケースを見てみましょう。

架空のコンペのリザルトです。



出場者は3名。

課題は8本でした。

話を簡単にするために、完登やゾーン獲得に要したアテンプト数はすべて1回だったということにしておきます。


旧ルールでは当然Aさんの優勝

Aさんは「ゾーンのみ獲得できた」という課題が1つも無いもの、完登数は最多だからです。

一方で、BさんとCさんは「ゾーンだけは獲得できた」という課題がそれぞれ3つと6つあります。



では問題です!

新ルール”採点方式”での順位はどうなるか。

すこし考えてみてください。






…………良さそうでしょうか?



それでは答え合わせ!

新ルールではこの順位です。




完登数の大小とは真逆!

完登数最小のCさんが優勝となり、完登数最多のAさんはなんと最下位です。



もちろん、いつもこのような逆転が起こるとはかぎりませんが、従来のルールではあり得なかった事態が起こるのが新ルールでの順位決定です。



順位決定の方式が従来とかなり異なっていることを確認できたうえで、どうしてこのようになるのか新ルールの規約を見ていきましょう。




新ルールの要点

新しく採用される「採点方式」による順位決定の要点は以下の3つです。

完登したら25点加算

ゾーン獲得のみの場合は10点加算

③その得点を獲得するまでに要したアテンプト数から”1”を引いた数に”0.1”を乗じた数値を、獲得点数から差し引く。



③が少しわかりづらいですね。

この項目によって学生時代に患った数学アレルギーを刺激される人が続出すると思われるので、とりあえずこれはいったん置いておきましょう。

まずは①と②について説明します。

改めてさっきのリザルトを見てみます。




「ゾーンのみ」の本数に注目。




改めて新ルールの要点を確認します。

完登1本につき25点加算。

ゾーンのみ1本につき10点加算。



その結果、得点が以下のようになります。



このように、完登数ではダントツだったAさんですが、「登れる課題は完登するが、登れない課題はゾーンすら獲得できない」という極端なクライミングスタイルが仇となり、ゾーン獲得を手広く積み上げたほかの2人に競り負けてしまうのです。



なお、このリザルトではアテンプト数を考慮していません。

さきほども言ったように、アテンプト数がリザルトの及ぼす影響はすこしわかりづらいところがあります。

そこでアテンプト数による減点については具体例を通じて解説します!


例:一撃でゾーン、そのまま完登

つまりは見事な「一撃完登」です。

これなら完登の25点そのまま獲得できます。



例:一撃でゾーン、3回目で完登

この場合も完登しているので25点。

と言いたいところですが、「一撃完登」とくらべれば2回だけ余計にかかっています。

なので2回ミスした分の減点があるのです。

具体的には、0.1 ×2= 0.2 点 の減点。

よってこの課題の得点は「24.8点」です。



例:2回目でゾーン、3回目で完登

ゾーン獲得にも1度ミスっていますが、結局は完登できています。

そして、完登までに2回ミスっているのは先ほどの例と同じ。

この場合も 25 − 0.2 = 24.8 点 が獲得点数です。

つまり、最終的に完登してしまえば、ゾーン獲得時のアテンプト数は不問になるのです。



例:2回目でゾーン、完登できず

つまり「ゾーン獲得だけ」という場合ケース

この場合は10点が加算されるはずですが、やはりアテンプト数による減点があります。

ゾーン獲得に1回ミスしてしまっています。

なので、0.1×1=0.1 点の減点。

つまり、獲得点数は「9.9点」です。




いかがでしょう?

アテンプト数による減点についてご理解いただけたでしょうか。

要は「失敗1回につき0.1点減点」です。




この改変が意味するもの

では、以上のような改変を踏まえてコンペティター(競技者)としてはどのように意識を改めていけばよいでしょうか?



まずは従来よりいっそう幅広い対応力が求められると言えそうです。

たとえばこんな決勝リザルト。


旧ルールでの勝者は1完登したAさん。

ところが新ルールではBさんの勝利。

Aさんの点数が1完登分の25点であるのに対して、Bさんは3ゾーン分の30点だからです(アテンプト数は考慮しないとして)。

せっかく映え課題を完登してもシビアな結果が待っているかもしれません……

Aさんは「コーディネーション課題(略してコーディ)」は大得意で、しかしながら得手不得手にムラがあるクライマーだったのかもしれません。

一方、Bさんは苦手の少ない万能タイプなのでしょう。

決勝の3課題はどれも激辛だったようですが、自分の特性にどハマリする第3課題を落としてどうにか1完登したAさんに対して、Bさんは全課題に幅広く対応していずれの課題でもゾーン獲得に成功。

そしてBさんのほうが評価されます。


一点特化の選手スペシャリストより万能タイプの選手ゼネラリスト」が評価されるのが新ルールの特徴である、と言えそうです。

言い換えれば、課題の出題傾向による有利・不利が緩和されたとも言えるかもしれません。

コンペではいろいろな課題が登場します。


となると、コンペに挑むクライマーは「苦手をなくすこと」にこれまで以上に注力して練習しなければならないでしょう。

また、実際にコンペに参戦したときには得意課題の完登に頼らず、苦手な課題でもゾーンだけ獲得しにいくチャレンジ精神がこれまで以上に求められると思われます。




以上が新ルール”採点方式”についての説明となります。

今回、BolBolからも多数の参加者があった神奈川カップでは、実際に「従来ルールなら優勝だったが、新ルールゆえに表彰台を逃した」という実力者がいました。

ルールの改変で泣くことになるとはとても悔しくて納得しづらい事態かもしれませんが、そこは競技者として対応していくしかなさそうです。

コンペでの好成績を狙う競技志向のクライマーのみなさんは、ぜひともこの新ルールに対応していき、あわよくばそのルールを有利に使えるクライミングスタイルを目指していってください!



最後まで読んでいただきありがとうございました!

それではみなさん。

ガンバです!


提供:ボルダリングジムBolBol